特性を持つ子どもの子育てに戸惑われている方、お悩みの方にぜひ知っていただきたい子育ての原則があります。お子さんはもちろん、ご家族も支援者さんも、子育てに関わる人が全員ハッピーになる「ハッピー子育て術」を、私たちは「太陽子育て」と呼んでいます。ここでは「太陽子育て」とはどういうものか、どうして「太陽子育て」が「ハッピー子育て」につながるかについて説明します。

 

  図1の(A)をご覧ください。ヨコの軸は能力の種類、タテの軸は能力の大きさを 表わしています。黄色はふつう、ピンクは優れている、青は劣っているレベルです。  ほとんどの能力が黄色に入っていれば、そのお子さんは「標準的」なレベルのお子さんと表現します。次に(B)のようにどの分野の能力も低め、全体に発達がゆっくりの場合は「遅れがある」と表現します。こういった能力プロフィールの場合は、知的な遅れに注意する必要があります。 (A) や (B) のお子さんはどの領域の能力も均一だから理解し  やすいのですが (C) をご覧ください。  能力の種類によって優れている部分もあれば  劣っている部分を持ち合わすお子さんです。こういった能力プロフィール、つまり能力が分野によってデコボコしているお子さんは理解することが難しく、育て方も難しいとされます。なぜなら(B)のお子さんならできなくても仕方ないと思うようなことが(C)のお子さんではできないことが気になって仕方ないからです。つまり、他のことはソコソコできるものだから、できないことも「頑張ればできるようになるはずだ!」と思って  しまいがちです。しかし背景に「特性」といったできない理由がある場合が多く、でき ないものはいつまでたってもできないので、子育ての目標を立てることがとても難しく なります。こういった(C)タイプのお子さんは意外に多く、そういったお子さんの  子育てに大切なことは何か?という話題です。

 

 その前に、脳科学の進歩により分かってきた大切な脳のしくみを図2で説明します。 ヒトは様々な体験をしますが、体験ごとに「快」「不快」を判断しています。うれしい、楽しいのは「快」を感じたときの気持ちであり、そういった「快」を感じると脳は  「幸せ物質」であふれ、たいへん活性化します。その一方、怒る、悲しい、やるせない のは「不快」を感じた時の気持ちで、「不快」を感じると脳に「ストレス物質」が満ち 溢れ縮んでしまい、脳の活動が不活発になってしまいます。このように、体験しだいで 脳は活性化することもあれば縮んでしまうこともあるので、お子さんにとって「快」の 体験はとても大切です。この現象は一生にわたり同じことが起きるので、大人は自ら「快」を求めて行動し、「不快」を避けようとします。しかしお子さんは、自分で環境を選ぶことができませんので、周りの大人、保護者や先生がこのことを知っていないと、 お子さんはずっと「不快」のまま脳が縮んでしまいかねません。つまり、お子さんが 「うれしい!」「よかった~」「ヤッター!」「できた!」という体験を積むことが脳を 活性化させ、最大限ポジテイブに育てることにつながるということであり、子育てに  おいてたいへん重要な事実ということができます。

 

 そんな脳の知識を前提として子育てを考えてみましょう。図3をご覧ください。   そういった事実を凸凹のあるお子さんにどう活かすかについてですが、有名なイソップ寓話「北風と太陽」はご存じと思います。少年のマントを脱がせる競争は北風でなく太陽が勝つというお話です。(A)をご覧ください。得意なことと苦手なことが明確にある「特性」のあるお子さんに対する保護者の態度は(B)・(C)の二通り、「みんなと一緒になってほしい」と願うあまり苦手なことばかりさせるのが北風(図B:これを標準化願望と呼びます)、一方で凸凹を治そうとはせず、わが子なりの幸せを願い得意なことばかりさせ欠点は無視するのが太陽(C)、結局は太陽の方針が正解だという話です。 

 なぜならば、あらゆる能力は「意欲」という「ヒモ」でつながっているため、苦手な課題ばかりでは意欲のヒモが切れてしまいます。(B) それに対して、好きなことばかりやらせれば、意欲のヒモが苦手分野にまで及んで引き上げられるのを期待できるのです。苦手を引き上げようとすればお子さんも保護者も「不快」ばかりですが、できること、得意なことばかりやらせて苦手なことを無視すれば、お子さんは達成感を感じ保護者は褒めてあげられるのでともにハッピー、「快」体験の蓄積で脳が活性化しますから苦手なこともできるようになるのです。「特性」を持つお子さんに標準化(みんなと同じになってほしい)の願いを抑え込み、その子らしく、凸凹でよいから幸せに育ってくれるよう願うのが「太陽子育て」というものです。

 

 図4をご覧ください。「快」体験の蓄積がどういった効果をもたらすかというと、「快」によって得られるのが「自信」と「安心」であり、「こころ」は「自信」と「安心」の貯金箱に喩えることができます。大人も子どもも「自信」「安心」がたくさん貯まっている人(A)と、少しに減ってしまった人(B)がいます。ストレスは誰にも同じようにかかりますが、この場合ストレスは出費に喩えられます。つまり、同じだけの出費(ストレス)があるとき、「自信」「安心」の貯金がいっぱい貯まっている(A)の人は余裕シャクシャクでストレスに対応できますが、「自信」「安心」の貯金が少なくなっている人(B)は今にも借金になってしまいそうだから心配でハラハラです。(A)と(B)両者におけるこの違いが、その人の気持ちや態度に大きく影響するのです。脳を活性化する「快」体験が「自信」「安心」を貯め、脳を縮める「不快」体験が「自信」「安心」を減らします。ストレス出費は減らそうとしてもそれは難しいことが多いので、いつも「自信」「安心」がたくさん貯まっていることを子育ての目標にするべきです。ですが保護者さまが(B)の状態では、子どもさんへポジテイブに接することは難しいので、まず保護者さまご自身が「自信」と「安心」をいっぱい貯める必要があります。つまり、自分に対しても長所を見つめ欠点を無視する「太陽子育て」的な発想で「快」体験を蓄積することが大切なのです。 しかしながら、「自分の子育てはこれでよいのか?」とか「わが子の将来は大丈夫なのか?」など不安が尽きませんので、どうしても(B)になりがちです。 そうであっても、お子さんを心配してしまう特徴は「特性」が理由であるならば、保護者さまの育て方の問題ではないということですから、ご自身の子育てに自信を持っていただき、お子さんの「特性」は大半が親譲りですので、そんな「特性」持ちの保護者さまが社会で立派にご活躍されているわけですから、わが子の将来も心配は要らないことになります。このように気持ちを切り替え子育てに自信をもち、将来を心配することなく子育てを楽しみ、周りの大人は全員がお子さんの「幸せ作りの応援団」になってあげてください。